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2008年6月21日

ウスイロヒョウモンモドキ

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「ウスイロヒョウモンモドキ」 2008.6.14 新見市にて

里山の人々と共存する蝶、ウスイロヒョウモンモドキ。

 
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草原に舞う小さな蝶、ウスイロヒョウモンモドキ。
体長20-25mmで翅を広げるとモンシロチョウとほぼ同じ大きさ。かつて阿哲台地が中国大陸や朝鮮半島と陸続きであったことの証しとされる北方系の地味なチョウですが、実は、近年(1980年代以降)、このウスイロヒョウモンモドキは急速に減少の一途を辿っています。
現在のところ、ウスイロヒョウモンモドキは兵庫、岡山、鳥取、島根のごく限られた地域にわずかに生息するのみとなっていて、2000年の環境省のレッドデータブックでも絶滅危惧種Ⅰ類に指定されています。わが岡山県でも、かつては約70ヶ所で生息が確認されていたにもかかわらず、現在では、新見市、新庄村、鏡野町のわずか3市町村5ヵ所のみになってしまいました。今は岡山県の絶滅危惧種に指定され、人々に保護されながらかろうじて生き残っているという状況です。 
 
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では、なぜウスイロヒョウモンモドキがこれほどまでに減少したのか?
それは、この蝶が暮らす環境がわれわれ人間の暮らしと密接に関わり合っているからです。
元々、ウスイロヒョウモンモドキの生息地は草丈が1m以下の葦(ススキ)の草原地帯や牧草地。
古来、里山では人々が雑木を切って炭を焼き、草刈りをして堆肥を作り田畑の肥料や牛馬の敷きわらとして利用する循環型生活を営んできました。しかし近年、過疎化や高齢化に伴う人手不足で放置される田畑が増え、今まで維持されてきた採草地や牧草地がどんどん減り、さらに農薬の大量散布などにより周辺の環境も悪化。その結果、ウスイロヒョウモンモドキの食草であるカノコソウやオミナエシも減少し、彼らが住める環境がなくなってきているのです。

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・カノコソウの花 
 
 
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・ヒメジョオンで吸蜜するウスイロヒョウモンモドキ
 
特に、現在ウスイロヒョウモンモドキの南限となっている新見市では、生息地が激減しており、危機的状況にあります。
そこで、2003年から倉敷芸術科学大学の河邊誠一郎教授らを中心に、地元の方々の協力によりウスイロヒョウモンモドキの生活環境を守るための活動が行われています。保護区を設け、採集禁止の看板を立て、地元の人々との共同作業によって秋に従来どおりの草刈りや、食草を移植するなど地道な活動が続いています。

「里山の人々と共存する蝶」 ウスイロヒョウモンモドキ。
先週はその勉強会・観察会に参加しましたが、人間の暮らし方の変化によって数を減らす蝶を見ながら少し寂しく複雑な心境になりました。
 
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【ウスイロヒョウモンモドキ 関連記事】 
ウスイロヒョウモンモドキ2009 (2009.6.9)
 

 2008年06月21日 |

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記事が前後しましたが、6月14日は新見でのウスイロヒョウモンモドキの観察会に参加。 翌日の6月15日は広島県でのヒョウモンモドキの観察会に参加していました。 ヒョウモンモドキは前回アップしたしましたので、今回はウスイロヒョウモンモドキの写真です。 ウスイロの幼虫の食草はオミナエシやカノコソウです。 今回撮影した生息地ではカノコソウを食べて成長いたします。 成虫になるとススキ野原を飛び回っています。 成虫の大きさはモンシロチョウと同じくらいとかなり小型のヒョウモンです。 去年も観察会... 続きを読む

受信: 2008/06/21 21:01:40

コメント

こんばんは。
観察会にお誘いいただきありがとうございましたm(_ _)m
ウスイロヒョウモンモドキ、今年も無事に会えて良かったです。
人間と密接な関係のあるこのチョウもいつまで見られるのか非常に心配です。
いつまでも見られるように努力しないと行けませんね。

投稿: スクイレル | 2008/06/21 20:10:39

最近更新が無かったので 淋しく思っていました!
素晴らしい解説と共に 環境をどうすれば良いのか 考えさせられる内容でした。
これからも この様な大切な生き物を 見守って生きたいですネ。

投稿: 夢民谷住人。 | 2008/06/21 21:40:37

>スクイレルさん
先週はお疲れさんでした。
ウスイロヒョウモンモドキ観察会、雨なら一人で行こうかと思ってましたが、直前になってお天気良さそうなので声を掛けさせてもらいました。
この蝶の場合、保護活動はできても里山での暮らしが元に戻らない限り自然発生的に安定することはないのかもしれませんね。

>夢民谷さん
お久しぶりです。いやはや、あちこちでご心配していただいてたようで申し訳ないです。(汗)
人と共存するのは、このウスイロヒョウモンモドキだけでなく、植物でも下草刈りをしないとダメなものがあり、今後は里山の保全が重要な課題ですね。

投稿: yama | 2008/06/22 4:09:07

いやー!病気?事故?に、でも、あわれてるのかと、心配して、ました。時期が、時期ですので、からだに、気をつけてください!

投稿: Canon | 2008/06/22 7:22:11

>Canonさん
すいませーん、お気遣いありがとうございます。m(__)m
暫く放置状態だったのでご心配をおかけしました。無事生きておりますのでまたお会いしたらよろしくです。(^_^;)

投稿: yama | 2008/06/22 13:53:47

特定の植物や環境に依存している生き物には、今の急激な人間の生活様相の変化は種の生存に対する深刻な危機ですね。
生物多様性を維持するためには、人間の生活の多様性も維持しなければならなそうです。難しい問題ですね・・・

投稿: ジョンからの手紙 | 2008/06/22 21:12:58

>ジョンさん
人間の多様性、まさにそうですね。
ウスイロヒョウモンモドキたちは、里山や農村離れが進む人間の暮らしと政策に警鐘を鳴らしているのかもしれませんね。

投稿: yama | 2008/06/23 19:57:44

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