アサギマダラの天敵
アサギマダラ。
謎が多い蝶ではあるけれど、「旅をする蝶」としてあまりにも有名で、マーキング調査によって確認されている最長移動距離は、山形県蔵王から与那国島までのナント2,246km。ひらひらと飛ぶこの蝶のどこにそんなパワーが備わっているのかとつくづく感心させられる。またアサギマダラの寿命は大変長く、成虫になってから、長いもので5~6ヶ月も生きる個体がいることがわかっている。
この蝶の特徴として、もうひとつ有名なのは、「毒を蓄える蝶」であること。
幼虫の食草であるガガイモ科植物のイケマ、キジョランなどはいずれも毒性の強いアルカロイドを持ち、これを体内に蓄積することで天敵から身を守っていると考えられている。
しかし、先日、大山でゼフィルスを観察中に、葉の上に現れたコオニヤンマが、動きの速いジョウザンミドリシジミを捕まえることができず、その代わり、ひらひらと近くに飛んできたアサギマダラを一瞬のうちに捕まえて少し離れた木の枝の先端で食べるというシーンを写真仲間たちと目撃した。
以下、その写真。
そして、コオニヤンマがアサギマダラを食べていた木の下には頭部と腹部のない、つまり胸部と翅が残ったアサギマダラの残骸があった。(実は、この時まだ翅がかすかに動いていた・・・)
この時、コオニヤンマは非常にゆっくりと時間をかけてアサギマダラを食べており、夕方再び、同じ場所に行ってみたところ、コオニヤンマが相変わらず複数で見張りをしていたので、コオニヤンマがアサギマダラの毒にやられてしまったとは考えにくい。
体内に毒を蓄え、自らの命を守るという巧みな選択をした蝶、アサギマダラ。
その結果、アサギマダラには天敵がいなくなったのかと思いきや、やはり食物連鎖という自然界の厳しい掟から逃れることはできなかった。
アサギマダラの天敵は、トンボの他にも、鳥、カマキリ、クモなどがいるようだが、もしかすると、少なくとも今回のコオニヤンマをはじめとする一部の天敵はアサギマダラの持つアルカロイド毒性に対してはもともと耐性を持っているか、あるいはすでに克服してしまっているのかもしれない・・・。
【関連記事』
・アサギマダラ(2009.10.11)
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コメント
おお!!
まさに食物連鎖の現場ですね。
でも、毒性のあるものに対して、どうなのかな?
種類によって、耐性のある個体が発生しているのでしょう。
昆虫類はともかく、鳥類は食あたりしていそうですよ。
投稿: 運転手 | 2009/07/26 22:50:23
おもしろいシーンですね。
まさに自然界の「厳しい掟」ですね。
梅雨明けが定まらない、うっとうしい気候ですが、西に東に、北に南にとお忙しそうですが、お疲れを出されませぬように。
投稿: よしとう | 2009/07/27 7:12:58
ご無沙汰してます。(*^^*)
ふぐのようなのかしら?
食べ残した部分以外は毒性が弱いとか・・・。
投稿: mizuho!! | 2009/07/27 8:38:02
今回一番気になったシーンを、しっかりとした文章でまとめましたね~(^^)v
食べられていた部分が頭と足の一部で体や腹が残っていたのが気になります。
毒もふぐみたいに内臓を食べなきゃ大丈夫なのかな。
投稿: 山猫 | 2009/07/27 23:27:56
衝撃のシーンでしたね!
一瞬のうちにアサギマダラを連れ去った時の光景が今も頭をよぎります。
食べ残していたのはそう言う事情があった訳ですか。
昆虫の世界も不思議がいっぱいありますね!
ますます興味が湧いてきたざんす(^^)
投稿: ようこ | 2009/07/28 21:44:05
とても興味深いお話ですね.。o○
昆虫類の4億年といわれる長い進化過程の謎に
ふれてみたくなりますね(^_^;)
残骸となった胸とかすかに動いていた翅・・
想像すると・・・ですが、これも自然界の法則なのですね(涙)
今月から9月までこんぴらさんで海野和男さんの写真展が開催されています^^
夏休みなので、娘たちと一緒に海野さんの世界各地で撮られた
めずらしい昆虫たちを観に行きたいと思っています^^♪
投稿: kamome | 2009/07/28 22:57:46
>運転手さん
アサギマダラが捕まって、食べられるシーンに偶然出くわしましたが、びっくりでしたね。
鳥たちに食べられているところはまだ見てないのですが、他サイトを見るとイソヒヨドリにはかなり食べられているということが書かれていました。
>よしとうさん
厳しい世界の中で食うか食われるかで生きている生き物たちを見ていると我々ももっと気を引き締めないと・・・と思いますね。(^_^;)
今朝、天気図見ると、もうそろそろ梅雨明けかもですね。
>mizuho!!さん
お、おひさです。
元気そうで何より!(笑)
アサギマダラの腹部は食べられていたのでここだけが弱いというのは考えにくいかなぁ。アルカロイド、鳥などが摂取すると嘔吐や吐き気があるようです。mizuho!!さんも食あたりに注意して!←なんでやねん?(笑)
>山猫さん
この日はこのシーンが印象に残りましたね。
昆虫は節足動物なので腹部はほとんど内臓と生殖器官でしょうから、そこは食べられていたということはどうなんでしょうね?また時間をとってじっくり調べてみますね。
>ようこさん
トラバありがとうございます。
うんうん、衝撃のシーンでしたね。
昆虫たちの自分の身を守り子孫を残すための知恵にはいつも驚かされます。
そういえば、セミの羽化もご覧になられてましたね。(笑)
これからもいろんなサプライズな発見ができるといいですね!
>kamomeさん
おはようございます。
夏休みの大人の自由研究でございます。(笑)
今回はアサギマダラにもしっかり天敵がいることをこの目で見ることができてよかったです。
そうそう、琴平での海野さんの写真展、ぜひ行ってみてください!生き生きとした昆虫の姿に感動できると思います。
僕も時間があれば行ってみます。(^▽^)
投稿: yama | 2009/07/30 8:00:11
こんばんは~
超勉強になりました~(@。@”
アサギマダラがかわいそう^^;
投稿: Angel | 2009/08/02 20:43:32
>Angelさん
ご無沙汰しています。
そうですね、可愛そうだけど生きていくためには仕方ない自然の摂理ですね。ある意味、昆虫の進化のプロセスは知恵比べの歴史とも言えますね。
投稿: yama | 2009/08/06 20:14:14